短文感想
バーボーベンの認識が完全に変わった賛否両論の戦争映画にして強い女性の映画
個人的%率90%
ネタバレ感想
先日、色々と機会があって2006年に公開されたバーボーベンの「ブラックブック」を観ました。自分、バーボーベンはあまり通って来なく癖の強い作品を作る人というイメージを勝手ながら持っていましたがそんな偏見が吹き飛ばされました。
ナチスが占領したオランダで家族を殺されたユダヤ人の女性がレジスタンスとなって必死にこの地獄のような状況を生き抜こうとする話で、潜入してナチスから情報を得てレジスタンスの仲間を助けようとしたりなどをやっていく話で、何が良いかと言うと兎に角見易い・・・ちょっと嘘だろ?と思えるくらいに映像が見易いんですよ。映像のカット割りの流れが非常に綺麗で引き画になると目が離せなくなるくらいに面白くて、細部のディテールに拘ってるのは勿論なんですがそれを出すタイミングが厭らしくならない程度に抑えられていてスッと入ってくるんです。
キャラの描き方もそこまで癖がある人物がいなく、ナチスを教養がある存在達と描いたり逆にレジスタンス側は下品だったりと両方とも一枚岩にはしない徹底的な作りで戦争を通して誰が1番の悪人なのかが描かれる話でそれは見てください。
演出を言うとこの作品で初めて分かったのですがバーボーベンって最低な映画を作るとかエログロ監督とか色々と言われて本人もそれをジョークのネタにするような人なのですがこの映画でそんな偏見は吹き飛ばされます。
途中でえげつない場面はありますし、セックスシーンも結構あるのですが観たら分かるのですがそれらの場面だいぶあっさりとしてるんですよ。
観てて不快感は無いわけじゃないけど思いの外スッと入ってくる映像で、この監督そう言ったシーンを映画に入れるけど別にそう言ったシーンが好きな監督じゃないんだなと自分の中で納得出来ました。
本当にそこら辺が良く取り上げられるからノイズになってるんですがこの監督は単純に映画に必要と思ったから入れてるだけでその部分が別に好きなわけじゃなく・・・単純にそこら辺を誤魔化す嘘が全く付けないというのが新発見でした。
スター・ウォーズのジェダイの帰還でスピルバーグがジョージ・ルーカスにバーボーベンを推薦した話がありますが納得です。そこの部分を除いたら非常にスピルバーグに近い感じがあるんですよ。ただスピルバーグの場合はあの人の作品は「両親が不在してる子供」に向けた映画なんで万人受けしやすいんですけどバーボーベンはスピルバーグと違ってその枠組みがないというか嘘が付けないからエログロを入れてそこばかり取り上げられちゃってる印象をこれで受けました。
バーボーベンの映画を少し見直して行きたいと思います。しかし、本当にこれ賛否両論はあるだろうけど傑作だった!